なぜお客様は次に EN 10204 3.1 を聞くのか?材質証明(MTR)で押さえるべきポイント
- 翰君 陳
- 1月15日
- 読了時間: 5分

加工業や五金部品の実務では、RoHS/REACH/PFAS Free の確認が終わった後に、次の質問としてよく出てくるのが:
「EN 10204 3.1 の材質証明はありますか?」
というものです。多くの加工業者にとって、この書類は“英語のレポート”に見えるかもしれませんが、実際には 取引を継続できるかどうかの重要な分岐点になることも少なくありません。
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1. EN 10204 とは?何を規定しているのか?
EN 10204 は、欧州標準化委員会(CEN)が制定した「検査書類の規格」です。ここでまず重要な点を整理します:
EN 10204 は材料規格ではありません。品質認証でもありません。
EN 10204 の役割はただ一つ。**「この検査書類は、どの程度信頼できるか」**を定義することです。
つまり EN 10204 が見ているのは、材料が良いか悪いかではなく、あなたが提出する検査書類が 信頼に値する形式・根拠を持っているかという点です。
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2. EN 10204 3.1 とは?
EN 10204 の区分の中で 3.1 は、加工業・五金業界で最も要求されやすく、かつ最も汎用的なレベルです。
EN 10204 3.1 の意味は次の通りです:
材料または部品の製造メーカーが発行する
書類に記載されるのは、そのロット(当該バッチ)の実測データ(一般的な参考値ではない)
結果は、生産部門とは独立した検査担当者(通常 QC/QA)が署名する
わかりやすく言うと、3.1 の本質は「データがあるか」だけでなく、実際に測定・試験され、しかも生産側の自己申告ではないという点にあります。
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3. EN 10204 の各レベルはどう違う?
3.1 を理解する前に、全体の区分を簡単に整理します:
2.1:適合宣言のみ(試験データなし)
2.2:試験結果はあるが、当該ロットの実測とは限らない
3.1:当該ロットの実測データ+独立検査者の署名
3.2:第三者または顧客立会い/監督の試験(最も厳格)
実務では 3.1 が最も一般的で、国際顧客にも受け入れられやすく、信頼性とコストのバランスが取れたレベルです。
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4. 材質証明(MTR)を受け取ったら、どう見ればいい?
初めて EN 10204 3.1 の MTR を見ると、ページ数も多く英語も多くて、どこから読めばいいかわからない…となりがちです。
ただし、全文を逐語的に読む必要はありません。以下のポイントを “スキャン” するだけで、その証明書が妥当かどうかを判断できます。
(1) 基本情報とトレーサビリティ(Heat Number)
まず見るべきは Heat Number(溶解番号/炉番号)です。
これは材料の“身分証”のようなもので、製品側の刻印・レーザーマーキング・ラベル等と一致して追跡できる必要があります。
書類の炉番号が実物と紐づかない場合、その材質証明の信頼性は大きく下がります。
(2) 化学成分(Chemical Analysis)
次に、化学成分表を確認します。
ここには C、Si、Mn、P、S、そしてステンレスでは Cr、Ni、Mo などの元素が記載されます。
数字を暗記する必要はありません。重要なのは、実測値が対象材料規格の許容範囲に入っているかどうかです。
(3) 機械特性(Mechanical Properties)
ここは材料が「十分に強いか」を見る項目です。
代表的な項目:
降伏強さ(Yield Strength):塑性変形が始まる境界
引張強さ(Tensile Strength):破断前に耐えられる最大荷重
伸び(Elongation):脆すぎないか
硬さ(Hardness):用途に対して要求を満たすか
荷重を受ける部品、構造部品、安全性が重要な部品では特に重要です。
(4) 熱処理状態(Heat Treatment)
MTR には、固溶化処理・焼鈍・焼ならし等の熱処理状態が記載されることが多いです。
同じ材料でも、熱処理条件が違うだけで、強度・靭性・寿命が大きく変わります。
(5) 署名と独立性の確認
EN 10204 3.1 の要件の一つは、生産部門から独立した検査担当者の署名があることです。
これは、納期の都合で適当に書いた数字ではなく、正式な検査プロセスに基づく結果であることを示します。
MTR(材質証明)クイックチェック表
チェック項目 | 見るポイント | 重要な理由 |
Heat Number(炉番号) | 明確に記載され、製品刻印・表示と一致するか | トレーサビリティと責任所在の要 |
材料規格 | 材質名・規格が正しいか | PO/図面要求との一致確認 |
化学成分 | 規格範囲内に入っているか | 耐食性・寿命に影響 |
機械特性 | 強度・伸び・硬さ | 安全性と耐荷重の確保 |
熱処理状態 | 明確に記載されているか | 性能が大きく変わる要因 |
署名・声明 | EN 10204 3.1 表記+独立署名があるか | 書類の信頼性を左右 |
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5. お客様が「不備」として返却しやすい MTR の問題点
実務で「材質証明に問題がある」と言われるとき、格式やレイアウトの話ではなく、**“このロットがこの材質だと証明できていない”**ことが原因になっている場合がほとんどです。
代表例:
書類の炉番号と実物が一致しない
材質が曖昧(例:ステンレス、炭素鋼としか書いていない)
成分または強度データが不完全
試験値が PO/図面要求と一致しない
熱処理状態の記載がない
EN 10204 3.1 要件の独立署名がない
書類のバッチと実際の出荷バッチが一致しない
返却される理由は「証明がない」ではなく、その証明が“この出荷品”に紐づいていないことが多いのです。
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6. なぜ材質証明はそこまで重要なのか?
加工業にとって材質証明は、単なる提出資料ではなく 責任の境界線です。
現場で不具合が起きたとき、炉番号と MTR によって、材料の問題なのか、加工条件の問題なのかを切り分けることができます。
MTR を正しく理解して扱えると、返却リスクが下がり、お客様も安心して発注しやすくなります。
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7. 勝豐精密ができること
実務では「3.1 があるか」よりも、**「その 3.1 が顧客に受け入れられるか」**がポイントになります。
勝豐精密は以下を支援できます:
EN 10204 3.1 が必要かどうかの確認
MTR の要点チェック/判読サポート
返却・追加提出・再手配リスクの低減
トレーサビリティのある五金部品と代替提案の提供
LINE:@s9000
仕様の相談も歓迎です。材質と証明の要点を一気に整理します。


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