ISO 2768 公差を理解する|誤差範囲ではなく、国際製造の共通言語
- 翰君 陳
- 11月5日
- 読了時間: 5分
設計図面では、寸法の横に「±0.1」や「±0.05」といった数値がよく記載されています。これは 公差(Tolerance)、つまり許容される寸法の誤差を示しています。
しかし、図面上に数百、数千もの寸法が存在する場合、すべての寸法に個別の公差を記入するのは非常に手間がかかり、誤記や漏れの原因にもなります。
そこで設計者・製造者・検査担当者が共通の基準で「許容誤差」を理解できるように制定されたのが、ISO 2768 国際公差規格 です。

左図: 各寸法に個別で公差を記載。
右図: 「ISO 2768-mK」を採用すれば、図面全体が統一された規格で表され、より明確で分かりやすい設計が可能になります。
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なぜ ISO 2768 公差が必要なのか?
ISO 2768 の基本思想はシンプルです。「すべての寸法に公差を記載する必要はない」。
図面に「ISO 2768-mK」と一行書くだけで、未記載の寸法にも共通の公差範囲が自動的に適用されます。
この仕組みにより、以下の3つのメリットが得られます。
記入ミス・漏れの削減:図面がシンプルになり、誤解が減る。
製造・検査の一貫性:異なるメーカー間でも同一基準で製作可能。
設計効率の向上:何百もの寸法に個別で数値を入力する必要がなくなる。
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ISO 2768 の2つの分類
ISO 2768 は、寸法の公差 と 形状の公差 の2方向に分かれています。
種類 | 説明 | よく使われる記号 |
ISO 2768-1 | 長さ、穴径、面取り、Rなど、寸法に関する公差を管理 | f、m、c、v |
ISO 2768-2 | 平面度、平行度、同軸度など、形状に関する公差を管理 | H、K、L |
簡単に言えば:
ISO 2768-1 は部品の「大きさ」を管理、
ISO 2768-2 は部品の「形の歪み」を管理します。
この2つは別々にも使えますし、同一図面上で併用することも可能です。
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「ISO 2768-mK」とは何か?
「ISO 2768-mK」という表記は、2種類の公差グレードを組み合わせたものです。
それぞれが異なる精度範囲を示します。
記号 | 対応規格 | 意味 | 管理対象 |
m | ISO 2768-1 | 中級の寸法公差グレード(Medium) | 長さ、直径、面取り、距離などの寸法誤差 |
K | ISO 2768-2 | 中級の幾何公差グレード(Grade K) | 平面度、垂直度、対称度、同軸度などの形状誤差 |
まとめると:
「m」 は部品の「サイズの誤差」を管理し、
「K」 は部品の「形状の歪み」を管理します。
したがって、「ISO 2768-mK」と記載された図面は、中級レベルの寸法精度 と 中級レベルの形状精度 が同時に適用されていることを意味します。
もし図面に「ISO 2768-K」とだけ記載されていれば形状公差のみ、「ISO 2768-mK-E」とあれば、包絡条件(Envelope Condition) も含み、より厳しい寸法管理を示します。
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ISO 2768 の公差等級
ISO 2768 では、寸法の許容誤差を4つの等級に分類しています。
それぞれは製作精度のレベルを表します。
等級 | 日本語訳 | 主な用途 |
f(fine) | 精密級 | 金型、精密部品、位置決めピンなど高精度部品 |
m(medium) | 中級 | 一般的な機械部品や組立部品 |
c(coarse) | 粗級 | フレーム、ハウジング、溶接構造物など |
v(very coarse) | 特粗級 | 大型構造物、鋼製フレームなど |
イメージで言えば、「f」は腕時計レベルの精度、「v」は建築用鋼骨レベルの公差範囲です。
どの等級が良い・悪いということではなく、用途に合った精度を選ぶことが重要です。
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ISO 2768 と ANSI / ASME の違い
アメリカでは ASME Y14.5 や ANSI B4.1 が主に使用されています。
目的は似ていますが、適用方法と表記に違いがあります。
比較項目 | ISO 2768 | ANSI / ASME |
使用地域 | ヨーロッパ、アジア、国際市場 | 北米地域 |
分類方法 | 寸法+幾何を統合管理 | 通常は別々に定義 |
表記方法 | 図面に一括記載(例:ISO 2768-mK) | 各寸法に個別記載 |
利点 | 図面がシンプルで伝達が早い | 精密な管理・法規制に準拠しやすい |
つまり、ISO 2768 は効率的なコミュニケーションを重視し、
ANSI / ASME は厳密な管理を重視しているといえます。
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この規格は本当に必要?
もちろん必要です。大量生産や国際共同開発の現場では、統一基準がなければ次のような問題が起こります:
寸法の誤解による部品不合格
異なるメーカーの部品が互換性を持たない
納期遅延や品質不安定化
ISO 2768 は、設計と製造の間をつなぐ共通言語です。図面に一度記載するだけで、関係者全員が許容誤差の範囲を明確に理解できます。
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まとめ:ISO 2768 は「誤差」以上の意味を持つ
ISO 2768 は、設計・製造・検査のすべてが同じ基準で作業できるようにすることで、「0.1mmの誤差はOKか?」といった曖昧な議論をなくします。そのため、多くの企業が ISO 2768-mK を図面基準として採用しています。
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